Column

受託開発オークションサイト(受託開発)

約5分で読めます文:野本 健太(代表取締役)

新しいサービスの法律確認は、専門家に「お金の流れ」まで見せる

その法律確認、許可の有無だけ?専門家にはお金の流れまで。― クリップで留めた契約書と万年筆、硬貨と虫眼鏡

この記事でわかること

  • 仲介か自社で売るか、売り方の形で必要な届出が変わる
  • ある法律で問題なしでも、お金の流れで別の法律に当たりうる
  • 机上の整理と専門家の確認は分け、確認までは確定扱いにしない

代金の受け渡しを伴うサービスを作るとき、「許可や届出は確認したから大丈夫」と考えていないでしょうか。実際には、許可の有無とは別に「お金がどう流れて見えるか」で問われる法律があり、そこを確かめないまま仕組みを固めると、後から大きな手戻りになりかねません。

私たちは、コレクターズアイテムのオークションを運営する企業様から受託したオークションサイトの新規開発(現在はリリース準備中)で、仕組みを確定させる前に法律の論点を洗い出し、専門家の確認にかけました。その結果、机上の整理の1つが弁護士の書面確認で覆りましたが、業務の流れもシステムも作り直さずに済みました。

この記事では、その経緯を根拠に、法律の確認をどう進めると手戻りを小さくできるかを書きます。ここに書く法律の結論は、すべてこの案件の事実関係に対するものです。

売り方の形が、必要な届出を変える

同じオークションサイトでも、作り方は大きく2つに分かれます。

  • 出品者と落札者の売買の「場」を貸し、両者を引き合わせる形(仲介型)
  • 運営会社が出品者から販売を任され、自分の名前で売主になって売る形(問屋型)

本件のお客様は古物商の許可を持ち、出品される品物を預かって査定・真贋の確認をしてから出品します。古物の競りを仲介する形になると、古物営業法の「古物競りあっせん業」に当たり、別の届出が必要になりえます。そこで本件では、運営会社が自分の名前で売る問屋型にすることを、2026年6月17日に方針として決めました。

この形は、画面の作りや運用でも崩れないようにする必要があります。本件では、出品者と落札者が直接連絡を取り合う機能を作らず、連絡は必ず運営を通す作りにしました。規約・商品ページ・領収書の上の売主を常に運営会社にすることも、運用のルールとして決めています。

弁護士の7月22日付の報告書では、「運営会社以外は出品者になれず、売り手と買い手が結び付く機能が生じない」ことを理由に、仲介には当たらないと判断されました。売り方の形を先に決め、それを作りにまで落としていたことが、この判断の根拠になっています。

法律ごとに、判断の軸は別にある

もう1つの大きな論点は、資金決済法でした。代金のやり取りを取り次ぐ仕組み(為替取引)に当たると、この法律の規制の対象になりえます。

私たちは机上で、「落札代金は運営会社自身の売上であり、他人のお金を送っているわけではないので、為替取引には当たらない」と整理していました(6月18日)。問屋型で自分の名前で売る以上、筋の通る整理です。

この整理を弁護士の確認にかけた結果、問屋型であることを前提にしてもなお、「落札者から代金を受け取り、手数料を引いて出品者に支払う仕組みは、実質的には代金のやり取りを仲介する仕組みとみなされ、為替取引に当たる可能性がある」との見解が示されました。

つまり、仲介に当たるかどうか(古物営業法)は「誰の名前で売るか」で決まった一方、資金決済法で問われたのは**「お金がどう流れて見えるか」**でした。ある法律で問題がないと確かめられても、それが別の法律での結論を導くとは限りません。

机上の整理と専門家の確認は、分けて管理する

法律の整理は、条文や所管官庁の資料などの一次情報にあたれば、机上でかなりの所まで進められます。ただ、自分の事業にどう当てはまるかの最終判断は、机上だけでは決めきれません。上の資金決済法の点が、まさにその例です。

そこで本件では論点ごとに、「社内で方針を決めた」段階と「専門家が確認した」段階を分けて管理し、専門家の確認が済むまでは確定扱いにしませんでした。確認してほしい点は質問票の形にまとめ、次の順で確かめています。

法律の論点を確定させるまでの進め方
  1. 1一次情報にあたり、机上で整理する(6月18日)
  2. 2お客様が所轄の警察に相談する(7月6日に共有)
  3. 3弁護士に書面で確認する(7月22日付の報告書)
  4. 4利用規約に反映し、条文を確認してもらう(9月17日付の報告書)

出典:オークションサイト 開発記録(2026年6月〜9月)

所轄の警察からは「仲介の届出は不要、ネットでの競り売りの届出は必要」との口頭の回答があり、弁護士の書面がそれを裏付けました。口頭の回答だけでは確定扱いにせず、書面での確認までを求めていました。資金決済法の点が拾えたのも、この書面での確認の中です。

確認を待つ間も、方針に沿って作業は進めました。そのかわり、結論が覆った場合に精算や請求書まわりのどこが作り直しになるかを、先に洗い出していました。

お金の受け渡しの順番を決めておくと、手戻りが小さく済む

弁護士からは回避策として、エスクロー(代金をいったん預かり、取引が済んでから渡す仕組み)として構成する方法が示されました。次の順番で取引を行い、それを利用規約に明記するものです。

利用規約で固定した、代金と品物の順番
  1. 1落札者が運営会社へ代金を支払い、運営会社が預かる
  2. 2落札者への品物の引き渡しを済ませる
  3. 3運営会社が手数料を引いて、出品者へ精算する

出典:オークションサイト 開発記録(2026年7月22日付の弁護士報告書を受けた利用規約の改訂)

ここで効いたのが、すでに決めていた精算の条件です。お客様とは6月18日に、出品者への精算は「落札者の入金を確認し、かつ落札者へ発送済み」の品物だけを対象にし、週に1度まとめて行うと決めていました。受け取った代金をそのまま右から左へ流す形に見えないよう、入金と精算を連動させない、という考えも込めて決めた条件です。

突き合わせると、この条件は示された順番と実質的に同じでした。そのため変えたのは利用規約の書き方だけで、業務の流れ・データベース・プログラムの変更はありませんでした。改訂した条文は同じ弁護士に確認していただき、9月17日付の2通目の報告書を受けて確定しています。

すべてが規約だけで済んだわけではありません。1通目の報告書では、偽造品の疑いが出た段階で出品者への精算を止められるようにすることも求められ、こちらはシステムに機能を足しました。また、エスクローの扱いは今後の法改正などで変わりうると報告書で注意されているため、見守る対象として残しています。

発注するときに役立つ3つのこと

許可の有無だけでなく、お金の流れを見せる

専門家に相談するときは、業務の流れと並べて、お金の流れ(誰がいつ受け取り、いつ、どんな条件で誰に渡すか)を1枚の図にして見せてください。本件で判断が分かれたのは、許可の有無ではなく、この流れのほうでした。

仕組みを確定させる前に、法務の確認を置く

開発会社には、「法律の確認が済んでいない論点はどれか」「結論が変わったらどこが作り直しになるか」を聞いてみてください。この2つに答えられる進め方なら、確認を待ちながら作業を進めても、手戻りの範囲を事前に見積もれます。

結論は、その案件の事実で決まる

ここに書いた結論は、この案件の事実関係に対して専門家が示したものです。同じオークションでも、出品の受け方や代金の受け取り方が違えば、結論も変わりえます。似た事業をお考えの場合も、ご自身の事業の形で専門家に確認してください。

書いた人

野本 健太株式会社Rushout 代表取締役

海上自衛隊、システムエンジニアを経て、2019年に株式会社Rushoutを設立。自社プロダクトの開発と受託開発を手がける。

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