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約4分で読めます文:野本 健太(代表取締役)

「Excelでも取り込める」をやめた理由 ― 業務システムは実物の帳票で決める

Excel対応、やめました。― バツ印を付けたExcelのファイルを指さすスーツ姿の男性

弊社が開発・運営している「SkillPort」は、エンジニアの経歴書(スキルシート)を一か所で管理するサービスです。手元にある経歴書のファイルを読み込ませると、中身を読み取って登録できます。

2026年8月、この読み込みで受け付けるファイルを、ExcelとPDFの両方からPDFだけに絞りました。

経歴書はExcelで作られていることが多いので、「Excelのままでは入れられない」のは、使う側から見れば不便になる変更です。それでも絞ったのは、機能を足す前に実物で検証し、その結果をもとに判断したからです。

この進め方は、業務システムを作るときにもそのまま当てはまります。

機能を足す前に、実物で確かめたこと

当時、Excelの読み取りの精度を上げるために「必要なシートだけを選んで読み込む機能」を足す案がありました。経歴書のExcelには記入例や別紙のシートが含まれていることが多く、それが読み取りの邪魔になると考えられたからです。

ただ、機能を足せば、作る手間も、その後に保守し続ける手間も増えます。そこで作る前に、実際に使われている経歴書(6シート構成のExcel)で、次の3点を確かめることにしました。

  1. 読み込める分量に収まっているか
  2. 記入例のシートは、本当に読み取りの邪魔になっているか
  3. ExcelとPDFで、読み取れる中身に差はあるか

1. 分量:表の作りによっては上限を超えていた

セルを結合した表では、1つの値が横に4〜5回くり返して読み込まれ、文字数が膨らむことが分かりました。確かめた経歴書では約12万字になり、読み込める上限(5万字)を超えていました。

この問題は検証の中で見つけたもので、その場で読み方を直し、約1万5千字まで縮めました。PDFとほぼ同じ分量です。

同じ経歴書(Excel)を読み込んだときの文字数
読み込める上限 5万字
  • 直す前約12万字
  • 直した後約1.5万字

出典:SkillPort 開発記録(2026年8月11日の実測)

2. 記入例:読み取りの邪魔にはなっていなかった

記入例のシートがある場合とない場合で読み取りの結果を比べたところ、案件名も日付も同じでした。読み取りの仕組みが、シートの見出しから記入例を見分けて除いていたためです。

この結果から、シートを選ぶ機能は精度を上げないと判断し、作らないことにしました。作る前に確かめたので、作った後で使われない機能を抱えずに済んでいます。

3. 形式の差:Excelでは読めない情報があった

差が出たのは、ソフトスキル(技術以外の、仕事の進め方などの評価)の点数でした。この経歴書では、点数がセルを赤く塗りつぶした横棒で描かれていて、セルに数字や文字は入っていません。色だけで点数を表しています。

Excelの中身を文字として読み出す方法では、この色は読めません。PDFは見た目のまま読み取るので、横棒も読み取りの対象にできます。

これは一部の経歴書だけの問題ではありません。色や記号で意味を表す書式である限り、Excelではくり返し起きます。

なぜ「両方に対応」を続けなかったのか

3点目の結果から、Excelも受け付けたままにすると、次の流れが起き続けることが見えました。

Excelを受け付けたままにすると起き続けること
  1. 1使う人がExcelを入れる
  2. 2一部の項目が正しく読み取れない
  3. 3登録した後で気づき、PDFにして入れ直す

Excelが入るたびに、この手戻りがくり返される

「どちらでも入れられる」は安心に見えますが、実際には失敗と入れ直しを生む入口を残すことになります。最初からPDFだけにしておけば、この手戻りは起きません。

切り替える時期も判断の材料にしました。利用している組織がまだ少ない今なら、影響は小さく済みます。先延ばしにするほど、Excelで入れることに慣れた利用者が増え、やめにくくなります。

なお、Excelの読み込み機能は消さずに、設定で戻せる形で半年間残しています。PDFだけで困らないことを確かめてから外す予定です。

業務システムを発注するときに役立つ3つのこと

この判断の進め方は、業務システムを作るときに私たちが大事にしていることと同じです。

実際に使っている帳票を、記入済みで1枚見せてください

ご相談いただくときは、今使っているExcelや紙の帳票を、記入済みのものを1枚ご用意いただけると助かります(個人名などは伏せていただいて構いません)。

空の様式だけでは分からないことが多いからです。色の塗り分け、記号、セルの結合、欄外の書き込みに、現場の大事な情報が入っていることがよくあります。今回の「色だけで描かれた点数」も、空の様式では見えず、記入済みの実物で確かめたからこそ設計に反映できました。

「全部に対応」は、いつも親切とは限りません

あらゆる形式や例外に対応すると、作る費用が増えるだけでなく、使う人が迷う場面も増えます。入口を絞ることも設計のうちです。何を受け付けて何を受け付けないかを、実物を見ながら一緒に決めます。

作る前に確かめ、戻せる形で決めます

機能を足す前には、それが本当に効くかを実物で確かめます。効かないと分かれば作りません。その分、費用も保守の手間も抑えられます。

機能を外すときも、すぐに消さず、戻せる形でしばらく残します。実際に使ってみて困ることが分かれば、元に戻せます。

書いた人

野本 健太株式会社Rushout 代表取締役

海上自衛隊、システムエンジニアを経て、2019年に株式会社Rushoutを設立。自社プロダクトの開発と受託開発を手がける。

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